経済では幸福や豊かさははかれない 山崎亮×藻谷浩介の対談本

studio-L代表の山崎亮の話から紹介された藻谷さんとの対談本を読みました。

藻谷さんの著書には「デフレの正体」「里山資本主義」があります。
読書会で話に上がったのですが、参加者の殆どが藻谷さんをご存知でした。
しかもみんなが口をそろえて推薦するので、早速読ませていただきました。

この対談は山崎さんの方から申し込んだもので、書籍化することも藻谷さんは大分迷われたようです。
対談も藻谷さんが山崎さんに疑問を投げかけ、山崎さんがそれに答える。
その後に、じゃあそれはなぜか?という藻谷さんのアプローチが入ります。

例えば、経済成長と実感が違う理由。
安部政権になって、頻繁に行なわれる街頭インタビューみたいなことですね。
藻谷さんは経済成長と幸福度(実感)が違う理由を4つ挙げています。

①仮定を積み重ねてつくられた経済成長率の計算が実態とずれてしまう

②経済成長率の計算が仮に正確にできたとしても、それは平均の話
 →個人の富の増加ベースとはずれている。

③経済成長率で測っているのはフローであって、その人がどれだけストックを蓄積出来ているかという話ではない。

④経済的にストックがあってかつ成長していたとしても、その人が人間的に幸せになれるとは限らない。


②の平均の話

マクロ経済学は平均ですべてを語れるというイデオロギーです。
極端な例で言えば、

税収が少ない、維持費のかかる自治体は撤退するべきか?

これを是とする

島根県民は大阪に移住すべき
となってしまいます。
そもそも自治体運営は、半分以上は国からのお金で行っており、税の徴収も県や国もしているわけです。

③のフローとストックの話に続きます。

「税収のいい地域」というのは、国に吸い上げられて「ストックが溜まりづらい」傾向があります。典型的なのが愛知県だそうです。トヨタがあってフローはいいが、ストックがあるか?
地域としてストックがある典型は「京都」です。


そして日本と世界で比較した時、日本は豊かではないのか?

GDPを抜かれた中国、日本の電機製品業界を圧倒した韓国、そして世界一の経済大国アメリカ。

これらの国に対して日本の国際収支は黒字です。

中国が栄えるほど、日本も潤います。
「日本は海外との競争で負けて追い詰められている」というのは根拠不足の脅迫概念です。


3.11で日本の燃料輸入額が増え、2011年は貿易額が赤字になりました。
原因は燃料輸入で輸入額が1割増え僅かに赤字になり、輸出自体は殆ど減速していません。

さらに所得黒字=外国へお金を貸したり投資をしたりの配当
は14〜16兆円/年間の黒字(16兆=3.11の被害額相当)になっています。

貿易収支で赤字なのはスイス・フランス・イタリアなど。
これらの国は高度な消費が文化を生み、文化がお金を稼ぐステージです。

文化での成長の必要性はこちらの本でも触れられていました。

過去エントリー)
これからの日本、経済より大切なこと 池上彰さんが好きな理由


日本が世界に認められているのは経済国としてであり、文化国としてではありません。
必要なのは経済成長でしょうか?


<関連図書>

まちの幸福論―コミュニティデザインから考える
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