北原茂実氏によるゼロベースで考える日本医療(社会) 東大での講演より

『「病院」がトヨタを超える日』 著者 北原茂実氏講演会 〜正しく思い、正しく考え、そして想いを形にすること〜
(2014年2月16日 東京大学)より

北原先生は一言では言い表せないほど色々なことをされています。

医療法人社団 KNI(「北原国際病院」、「北原リハビリテーション病院」、「北原RDクリニック」によって構成)をつくり、八王子では数多くの斬新な地域振興事業をおこし、
また、日本の医療を輸出産業に育てるべくさまざまな国際事業を展開しております。
詳しくはこちら「NGO日本医療開発機構」

人気の著書:「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる!
は、ちきりんさんにも紹介されています。
医療を基幹産業にする、という発想 - Chikirinの日記

20年前から医療を輸出すべきとしており、八王子の病院は高級ホテルさながら。
賛否両論はありますが、斬新な発想と優れた国際観は経営者としても群を抜いています。

そんな先生の話は、冒頭から「日本社会は崩壊する」いや世界システムは破滅する」という強い論調ではじまりました。
今の仕組みではいけない。「ゼロベース」という言葉は講演中何度も使われました。

これからの世代は
「利益をどう分配するのか」ではなく「負の資産をどう公平に負担するか」の時代。

ゼロベースで考えたとき

「選挙に意味はあるのか?」

そこから考えなければいけない。
今の日本では非労働人口が多く「もらう側」の意見が反映される。
テクノロジーの発展により、1つのイシューに対する民意が一瞬で収集する技術はある。
それなのに「間接民主制」の必要があるのか?

「医療とは何か?」

医療とは総合生活産業である。
単独では成り立たない。食事がとれない→医療はそれだけで成り立たない。
全ての市民が医療者になりえるし、医療者である。
笑顔で人が癒される。それも医療である。

医療崩壊の真実はなにか?」

医療費抑制からはじまった。
看護婦(介護福祉士)が何故足りないのか?
毎年10万人も卒業生がいる。
単純な話。給与が悪すぎる。下手したらバイトしていた方がもらえるのだから。

「高齢者はそもそも消費しない」

消費するのは「医療」と「お墓」ぐらいだ。
それなのに、医療費を抑える。
高齢者が不安になれば消費は縮む。
高齢者は高くても「医療」にはお金を出す。
そうすれば若い人にも雇用が生まれる。

「皆保険は卒業するべきだ」

日本では皆保険を維持できる条件が崩れてしまった
「人口がピラミッド型」「経済が右肩上がり」
とっくに維持できない状態になっている。

国民健康保険は保険じゃない。税金だ」

保険とは未来へ備えるもの。
時間軸のない今の制度は保険ではなく税金である。


「医療産業は特別ではない」

医療産業は自動車産業より大きい。
情報の非対称性・命を扱うことは医療に限った話ではない。

「医療はもっとも個人情報を持っている」

行政なんか比べ物にならない。
個人の家族構成や病歴などまで把握している。

「まずいラーメン屋を訴えられるか」

例え下手な手術をされて、それを訴えようとしても勝てない。
「落ち度があったレベルではない。たとえばまずいラーメン屋を訴えられるか?」
そんなことが医療でも許されるのか?

「株式会社が病院を運営して行くのはいけないことなのか?」

海外(韓国)をみたらどうなのか?医療法人は存続させてはいけない。


「保険がなくなれば競争がおきて、開業医は潰れるだろう」

一回で済ませられる病院に患者は集中して、
開業医は余計な検査や処方をしていたら患者は来なくなる。

統制経済によってコスト感覚がなくなっている」

託老所(⇔託児所)」を提案し、いくらならあずけるか聞いた。
一番多い回答は「無料だった」。それが日本人のコスト感覚。


「日本医療の問題の根本は次の二つ」

1.値決めができない
2.人事考課がない

使えない60代の医師・看護師が一番高い給与をもらい、一番働いている30〜40代はずっと低い給与。

「医師数は本当は足りている」

自動問診システムというのがある。
これが出来れば必ず人間より優秀になるのは過去のシステムの自動化や人間との対戦(チェスなど)を見れば明らか。そして海外にも簡単に流用できる。小児の世界でも95%の診断率を誇る。


「正しく識(し)る」

固定概念を捨て論理的に考える


北原先生の話し方は自信と力強さにあふれていました。
まさに未来を指し示す先駆者のように。

 ブレない。

「本当に怖いのは自分と敵対する人間ではない。
  自分を支えて、ついてきてくれる人だ」

今自分が学生なら、ぜひこのプロジェクトに参加してみたい。