救急救命士の業務拡大は必要?

先日ドクターカーを見たときに
「救急隊員も医師に近いような行為ができる資格とかあったらいいんじゃないですかね?」
と書いたのですが、今回「救急救命士の業務拡大」の記事がありました。

急救命士の業務拡大、来年度から実施へ- 検討会報告書受け厚労省方針

下記の2つが追加される業務です。

▽血糖測定と低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与
▽心肺機能停止前の静脈路確保と輸液の実施

今の救急体制において、これは朗報では?
と思ったのですが、よく見ると結構限定されている内容とも感じます。

素人なのでわかりませんが、
低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与」
はどの程度の頻度と効果があるのだろう。。
調べてみると、

このうち121例(96%)で意識レベルが改善された。一方、救急救命士が現場で処置しなかった場合の改善率は16%にとどまった。

というのがあったので、症例によって劇的な効果が期待できるようです。


「心肺機能停止前の静脈路確保と輸液の実施」
は素人が聞くと、とても重要な処置に思えます。

救急救命士の業務のあり方等に関する検討会第2回の資料によると

救急領域でもっとも遭遇する機会が多いのは重症外傷による出血性ショックであろう。

ショック状態に陥った傷病者に対し,医療機関到着前に静脈路確保と輸液を要する重症傷病者は日常の救急診療で多数経験する。

とありますので、一般的なイメージ通りなのかな?これは効果覿面!?
と思ったのですが、もう少し調べえてみると問題もあるようです。

救急救命士の業務のあり方等に関する検討会 報告書 より

ショックインデックスの有意な改善は認められなかったが、処置を実施した救急救命士の評価では「皮膚の蒼白、湿潤・冷汗」と「微弱な脈拍」は改善が認められた。

とあります。要するに数値的には改善しなかったけど、それ以外の面では改善が見られたということでしょうか。数値以外の改善も非常に重要だと思いますが、これだけの処置を追加するのに、数値的には有意な改善が認められないとなると、ちょっとその効果は疑問に思えます。

さらに
現場到着から現場出発までの時間
現場出発から病院到着までの時間
は有意に延長を認め

多変量解析では、本介入と入院率、搬送時間の長さ及び入院率に正の相関関係を認めたが、本介入と入院日数、死亡率との相関関係はみられなかった。心原性ショックのみの死亡率の分析では、多変量解析で、介入は死亡率を押し上げる傾向があったものの有意差はみられなかった。

とあります。ちょっと難しいですが、
介入したことで必ずしもいい結果が出ていない。
というのであれば介入する必要はあるのでしょうか・・・

次回はさらに資料を読んで気になった点を追ってみたいと思います。